この記事を書いた人:tkc
今回の記事は、愛車グラストラッカービッグボーイを例に、ディスクブレーキパッドの鳴き止めを、自分で実施するための手順を詳しく解説します。
なぜブレーキが「キーキー」鳴くのか?(鳴きの原因)
ブレーキの鳴きとは、ブレーキをかけたときに「キー」と甲高い音が鳴る現象です。
これはパッドやキャリパー、ローター(ディスク)が「共振(きょうしん)」と呼ばれる細かな振動を起こしていることが根本的な原因になります。
この不快な音の原因になる振動を抑えるための対策が「パッドの面取り(めんとり)」と「パッドグリスの塗布」です。
鳴き止め作業で使用する工具とケミカル
このDIY作業で主に使う工具とケミカルです。

- ソケットレンチ(今回は14mmを使用)
- ブレーキパッドグリス(高温に耐えられる専用グリス)
- ヤスリ(角を軽く落とす面取りに使います)
- 細いラジオペンチ(Rピンを抜くのに使います)
ブレーキキャリパーの取り外しと注意点

まずはフロントフォークに固定されているブレーキキャリパーを取り外します。
レンチ使用時の注意!:ボルトをなめないために
ボルトを緩める際に力を入れすぎると、レンチの先がボルトから浮き上がり、ボルトの頭を丸めてしまう(専門用語で「ナメる」といいます)ことがあります。一度ナメると取り外しが困難になるため要注意です。
これを防ぐためには、片方の手でレンチの頭をボルト方向に押さえながら(ソケットとボルトが密着していることを確認しながら)レンチを回すと、ソケットが安定してズレにくく、力を確実に伝えられます。
ディスクパッドの取り外しと教訓

キャリパーを外してディスクパッドを確認してみると、以前の作業でシリンダー(ピストン)側はパッドグリスが塗布してありましたが、反対側にはパッドグリスが塗布されていませんでした。
塗ったと思い込んでいた私のうっかりミスです。
このままでは鳴き止め効果は得られないため、パッドグリスを塗り直すためにブレーキパッドを外します。

グラストラッカーのブレーキパッドは両端に穴があり、一方をキャリパーから出ている棒状の部分に差し込み、反対側はスライドバーを差し込んでRピンで留めてあります。
写真はピンを抜いたところですが、差し込むと外からは見えなくなります。
抜く時は細いラジオペンチなどで挟んで引き抜きましょう。
ピン自体はすぐに悪くなるものではありませんが、抜き差しが緩くなっていたり、錆が酷いようなら交換しましょう。
純正部品じゃなくても、バイクパーツ店か、ホームセンターでも手に入りますよ。(サイズがあるので、スライドピンの太さを確認しておいてください)
鳴き止め効果を高めるブレーキパッドの処理
角を落とす(面取り)で振動を抑える

パッド自体は少し摩耗しており、新品の時のように角が立っています。
この状態だと、ブレーキ時にピストンに押されてパッドがローター(ディスク)を挟み込んだ際、角が原因で細かい振動が起き、「キー!」というビビリ音が出やすいです。
対策として、この角をヤスリで軽く斜めに落とします(面取り)。
この処理により、パッドの振動が抑えられ、周辺パーツへの共振も抑えられるために、鳴きを解消する効果があります。
ブレーキパッドグリスを塗布する

ブレーキパッドの裏側の、シリンダー(ピストン)が当たる部分と、キャリパー本体が当たる部分にブレーキパッドグリスを塗りましょう。
このグリスがパッドとピストン・キャリパーの間にクッションの役割を果たし、ブレーキ時のパッドの振動(ビビリ)がピストンやキャリパーへ直接伝わるのを軽減し、音の発生源をシャットアウトします。
このようにディスクブレーキの鳴きは、パッドグリスの塗布とパッドの面取り(角を削ること)をすれば、まず解消します。
今回使用したソケットレンチの豆知識
今回の作業では特に大掛かりな工具は必要ありませんでしたが、ソケットレンチの選び方について少し解説します。
ソケットレンチで使用するソケットとレンチの接続部分のサイズを「差込角(さしこみかく)」といいます。この差込角の大きさはインチサイズで表現され、主に3種類あります。

・3/8インチ(9.5ミリ):今回使用したサイズ。汎用性が高く、小型のバイク整備に適しています。
・1/4インチ(6.35ミリ):最も小さく、精密作業や小さなボルト向けです。
・1/2インチ(12.7ミリ):大きなトルク(強い力)をかける必要のある、大型バイクや車の整備で使われます。
私は3/8インチと1/4インチを所有していますが、1/4インチはレンチ自体も小さいものが多いため、ツーリング時の携帯工具として重宝しています。ソケットレンチのより詳しい使い分けや選び方については、別の記事で詳しく解説しています。




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