なぜブレーキパッド交換は重要なのか?
バイクの安全な走行の不可欠なブレーキ。中でもディスクブレーキパッドは定期的な交換が必要になる重要なパーツです。ブレーキは『走る・曲がる・止まる』というバイクの基本操作の中でも、得意に安全に直結する最も重要な要素の一つです。
ブレーキパッドが摩耗すると制動力が低下し、思わぬ事故につながる可能性があります。そのため、定期的な点検と適切な時期での交換が非常に大切になります。
「自分で交換するのは難しそう…」と感じる方もいるかもしれませんが、この記事では、初心者の方でも迷わずできるディスクブレーキパッドの交換方法を、写真付きで分かりやすく解説します。
必要な工具から手順、交換時期の目安まで、あなたのバイクライフを安全にするための情報を詰め込みました。
ブレーキパッドの交換時期:安全な走行のために
ブレーキパッドの交換時期は、一般的に走行距離が5000km〜10000kmと言われますが、乗り方によって大きく異なります。そのため、走行距離だけでなくパッドのライニング(摩擦材)の残量を定期的に確認することが重要です。
・走行距離を目安にする場合:5,000km~10,000kmを目安に点検を行いましょう。
・残量を目安にする場合:パッドのライニングが5mm以下になったら、毎回乗る前に目視で確認し、3mm以下になったら交換を検討しましょう。1mm以下になった場合は、一刻も早く交換する必要があります。
・複数キャリパーのチェックポイント:キャリパー(ブレーキパッドをローターに押し付ける部品)が2つあるバイクの場合、それぞれのパッドの減り具合が異なることが多いので、両方とも必ず確認してください。

写真のパッドで約2mmでした。このように、パッドの残量が少ない場合は早めの交換を心がけましょう。
ディスクブレーキパッド交換の準備
作業前の注意点
ディスクブレーキパッドの交換作業を行う際は、以下の点に注意してください。
・平坦な場所で行う:バイクが安定した状態で作業ができるよう、平坦な場所を選びましょう。
・バイクを固定する:ジャッキやセンタースタンドがあれば最適ですが、難しい場合はギアを1速に入れておくことで、バイクが動くのを防ぐことができます。ただし、不安定な状態での作業は危険ですので、十分に注意してください。
必要な工具とケミカル
・新しいブレーキパッド:ご自身のバイクに適合するものを用意してください。
・キャリパーを取り外すための工具:一般的には六角レンチやメガネレンチが必要です。
・ブレーキパッドグリス:新品のパッドの動きを滑らかにし、異音を防ぎます。
・パーツクリーナー:キャリパーやピストンの清掃に使用します。
・ウエス (布):汚れを拭き取るために使用します。
・ヤスリ:新品パッドの角を面取りするために使用します。
・(あると便利)ドライバー:ピストンを押し戻す際に使用することがあります。
図解!バイクのでィスクブレーキパッド交換手順
1.キャリパー本体をフロントフォークから外す

まず、フロントフォークからキャリパー本体を取り外します。
写真の引き出してあるキャリパー本体の2本のボルトを緩めます。この時、写真のように引き出さなくても少し緩めておく程度で大丈夫です。
次に、フロントフォークにキャリパーを固定しているボルトを緩めて抜きます。
先にキャリパー本体をフロントフォークから外してしまうと、キャリパー本体のボルトを緩めるのが大変な場合がありますので、固定されているうちに緩めておくのが容易です。
フロントフォークからキャリパーを取り外そうとしても、パッドがディスクローターに密着しているため、なかなか外れないことがあります。その場合はキャリパー本体をゆっくりと、しかし確実にローター側へ少し押し込むと、ピストンが押し戻されてキャリパーを引き抜くことができます。
パッド交換のみを行う場合は、ブレーキホースを痛めないように、キャリパーを台の上などに置いておくと良いでしょう。
2.古いパッドとガイド部分を外す

古いブレーキパッドとガイド部分を取り外します。パッドは、キャリパーの種類によってピンやスプリングなどで固定されています。ローターからキャリパーを取り外したら、パッドがどのように固定されているかをスマホのカメラなどで写真を撮っておくと、組み立てる際に迷うことがありません。
3.ピストンの清掃と状態確認
取り外したパッドはライニングの粉塵で汚れていますが、ピストンに錆は見られなかったため、ウエスやダストクリーナーで粉塵を除去して清掃する程度で十分でしょう。
しかし、ピストンの錆の有無は必ず確認してください。もし錆があっても軽度であれば金属磨きで落とせば問題ありませんが、もし錆がひどく、金属磨きを使っても指で触ると錆の部分が引っかかるようなら新しいピストンへの交換が必要です。
ピストンを外すには専用工具が必要なため、その手順は今後の記事で詳しく解説したいと思います。
4.新品パッドの面取り

新品のブレーキパッドは、端が直角になっていることが多いです。この角をヤスリで軽く落とすことで、ブレーキの鳴きを防ぐ効果があります。
角を落とす量や角度は個人差がありますが、私はいつも写真に示す程度に留めています。
5.ピストンを押し戻す

ピストンはパーツクリーナーで軽く汚れを落としてからウエスで綺麗に拭き上げました。古いブレーキパッドを取り外した写真と異なる点としては、新しいブレーキパッドを取り付けてからローターを挟み込みやすくするために、ピストンを押し戻してあります。
片方のピストンを押すと、もう片方のピストンが飛び出してくるので、両方のピストンを両手でゆっくり強く押し戻してください。
それほど大きな力は必要ありませんが、もし不安な場合は古いパッド (赤い方が背面で白い方がライニング面です)を入れて、ドライバー等 (青い線で示されてます)で矢印のように軽くこじってやればピストンを押し戻すことができます。
ローターを挟むことができれば良いので、完全に押し戻す必要はありません。
6.新品パッドにグリスを塗布

ピストンの準備が出来たら、新しいブレーキパッドの背面(ピストンが当たる部分と、反対側のキャリパー本体に接触する部分)に、ブレーキパッドグリスを薄く塗布してください。
7.新品パッドの取り付け
新しいパッドをキャリパーに元の状態に戻してセットします。分解する際に撮影した写真などを参考に、間違いないように確実に取り付けてください。
8.キャリパーをフロントフォークに固定
パッドのセットも完了したら、キャリパーをフロントフォークに取り付けますが、取り外しの逆の手順で行います。
まず、キャリパー側の2本のボルトのネジ山のない部分にグリスを塗布してから、手で回せる範囲で締め付けます。その後、フロントフォークにキャリパ一を固定しているボルトを締め付け、最後にキャリパー側のボルトを締め付けます。
9.ブレーキの作動確認

4本のボルトを全て締め終わったらフロントブレーキレバーに手応えを感じるまで、数回握って離す動作を繰り返します。写真のようにローターとパッドがしっかりと接触したら、実際にバイクを押し引きしてブレーキ制動を確認してください。
交換後の注意点:安全なバイクライフのために
キャリパー本体をフロントフォークにボルトで固定する際、タイヤの回転方向に軽く押さえつけながら締め付けると、ブレーキをかけた際にキャリパーが逃げないのでボルトの緩み防止になります。
冒頭にも述べましたが、ブレーキは安全に関わる最も重要な部品です。自分で交換できるようになると、もし何かトラブルがあっても落ち着いて対応できるようになるため、挑戦してみるのも良いでしょう。もし自信がない場合は、無理せずプロに依頼し、可能であれば作業を見学させてもらうと理解が深まるかもしれません。
パッド交換後は、実際に走行してブレーキの効き具合を慎重に確認し、しばらくの間は、走行前にボルトの緩みがないか確認するようにしてください。
安全確認をしっかりと行い、安全で楽しいバイクライフを送りたいですね。
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