この記事を書いた人:tkc
「ブレーキの効きが悪い…」「雨の日にキーキー鳴って恥ずかしい!」バイク乗りなら誰もが経験する悩みの1つです。もちろん私も経験があるのでよく分かります。
どれだけ愛車をカッコ良くカスタムしていても、ブレーキの異音は興醒めですよね。
この現象の多くは、単なるシューの摩耗だけでなく、グリス切れや調整不足が原因です。
この記事では、長年の経験に基づく確かな知識で、ドラムブレーキの鳴き止め対策とブレーキシューの確実な交換手順を分解・整備のポイントを含めて徹底解説します。
【最重要】作業は自己責任で行ってください。ブレーキは命に関わる保安部品です。ドラム内にグリスやオイルが付着すると、ブレーキが全く効かなくなり非常に危険です。最新の注意を払いましょう。この記事を読んでも自信のない方は必ず信頼できるショップにご相談ください。作業の見学が可能なら良い勉強になるでしょう。
ドラムブレーキの仕組みとブレーキシュー交換のタイミング
ドラムブレーキは、ブレーキシューがドラムの内側に擦れることで発生する摩擦でバイクを減速させるシンプルな仕組みで、構造がシンプルゆえに、整備が比較的容易なのが特徴です。
ドラムブレーキシューはこのシステムの中で重要な役割を果たしており、摩耗することでブレーキの効きが悪くなることがあります。
ブレーキシューの交換を考える主なタイミングは以下の通りです。
・ブレーキの効きが悪い:整備をして、ブレーキをかけてもスピードがなかなか落ちない場合。
・ブレーキシューの摩耗(残量):ブレーキシューの摩擦材の残量が2mm以下になったら交換を強く推奨します。1mm以下は非常に危険な状態です。
・アジャスターの調整範囲の限界:ブレーキケーブルの先端にあるアジャスターナットの調整範囲が限界に近づいたら、シューの摩耗が末期であることを示します。
経験から、リヤタイヤを外すのは手間がかかるため、普段から摩擦材の厚みと乗った距離を記録しておくと、おおよその交換時期の目安になります。
経験者が教える、ドラムブレーキの鳴き止め対策!
小雨や雨上がりに発生する「キーキー」音は、ブレーキシューの摩耗が原因と思われがちですが、多くの場合、カムシャフトのグリス切れによる振動で鳴っていることがほとんどです。
鳴き止め対策として、カムシャフトのグリスアップを徹底しましょう。(詳細は「手順3」で解説します)
【完全手順】ブレーキシューの交換作業開始
手順1:リヤタイヤの外し方(固着時の対処法)
まずはジャッキアップしてリアタイヤを外します。

1.ドラムのテンションバーとブレーキケーブルを外します。
ブレーキケーブルの先端にあるナットは、片手でケーブルとカムシャフトレバーを握るようにすると、スプリングの力に負けずに簡単に緩めることができます。
2.アクスルシャフトのナットを緩めます。
3.アクスルシャフトを抜きます。シャフトはタイヤが地面から浮いていたり、シャフトに負荷がかかっているとスムーズに抜けません。
片手でシャフトの頭を引っ張りながらジャッキの高さ調整をするとちょうどいいところでスポッと抜けます。
【経験者の知見:固着時の対処法】どう頑張っても抜けない時は中で固着している可能性があるので、アクスルシャフトに錆止めの潤滑剤(ラスペネ等)を塗布し、反対側からプラスチックハンマーなどで軽く叩いてみてください、この作業で解決しない場合は、無理に進めず元に戻してバイクショップに持っていくのが安全でいいでしょう。
手順2.ブレーキパネルの分解と古いブレーキシューの取り外し

1.タイヤが外れたらブレーキパネルからカムシャフトレバーを外します。

この時、薄いプレートのインジケータは無くさないように注意してください。
2.ブレーキシューを外す前に、どうやって組まれているか(スプリングの向きなど)を確認してからバラしましょう。
3.ブレーキシューはスプリング式で取り付けられています。付属のスプリングを解放してシューを外してください。

ブレーキシューはだいたい5000kmから10000kmでの残量確認が理想です。
写真だと3.5ミリ残っているので私はまだこのままにしておきました。2ミリぐらいになると新品に交換してしまった方が安心かなと思います。
リアタイヤを外すのは地味に面倒なので。
ディスクブレーキのように摩擦材の残量が見えないので、普段からバイクに乗る人は摩擦材の厚みと乗った距離を記録しておくとおおよその残量がわかるので交換時期の目安になります。
手順3.カムシャフトの清掃とグリスアップ(鳴き止め)

ブレーキシューを外したら、なき止め対策の最重要ポイントです。
1.カムシャフトを抜いて、シャフト部分の古いグリスをパーツクリーナなどで完全に拭き取ります。古いグリスが残っていると、新しいグリスの性能が低下します。
2.清掃後、シャフト部分に新しいグリスを薄く均一に塗ります。
3.【鳴き止めの上級テクニック】シャフト部分だけでなく、ブレーキシューとブレーキパネルが接する*3箇所の接点にもごく少量のグリスを塗ってください。これにより作動時の摩擦や振動を抑え、鳴き止め効果が増します。

*3箇所の接点:ブレーキシューはブレーキパネルから出ている写真左側の円柱とカムシャフトを挟み込んでいます。この2箇所と、ブレーキパネルに差し込まれるカムシャフトのシャフト部分とストッパー部分のことを指しています。
【注意】
タイヤを外すのが面倒だからといって、ドラムの外からシャフトに潤滑剤やグリススプレーを吹くと、中で飛び散ってシューやドラムに付着し、ブレーキが効かなくなる可能性があります。安全のためにも必ず分解して作業してください。
新品ブレーキシューの取り付けと最終調整
1.新しいブレーキシューを取り付けます。古いブレーキシューを外した逆手順で取り付け、スプリングがしっかり固定されているか確認してください。スプリングをあらかじめシューに取り付けた状態でシューを片方ずつセットすると容易です。

2.ダンパーの確認:リアタイヤをわざわざ外すことはなかなか無いので、外したついでにダンパー(ゴム製の部品)の確認もしておきましょう。
不具合(擦り切れていたり、カチカチだったり)があるとエンジンからの動力が上手くタイヤに伝わらないので重要です。
調整1:ブレーキパネルの調整とドラム内の清掃

1.ブレーキシューをセットしたパネルを元に戻す前に、ドラム内を清掃しますが、ドラム内の粉塵は吸い込むと大変(金属粉が混ざっているため)なので吹き飛ばさず、ブレーキクリーナーなども使いウエスで拭き取ってください。
2.シューの当たる部分と当たらない部分に段差があるようなら400〜600ぐらいのサンドペーパーで均しておきます。
3.パネルをドラムに戻したら手でパネルを回して動きがスムーズかも確認しておきましょう。
4.カムシャフトとレバーはポンチ(合いマーク)が合うように慎重に組み戻します。
5.リヤタイヤを戻す際、アクスルシャフトに付いているグリスを拭き取り、作業中に付着したゴミを取り除き、新しくグリスを塗り直してからシャフトを差し込むようにしてください。
調整2:ブレーキレバーの「遊び」調整
全ての組み付けが終わったら、ブレーキの調整をして完了です。
・「遊び」の調整:ブレーキペダルを操作し始めてから、実際にブレーキが効き始めるまでの隙間(遊び)を、ケーブル先端のアジャスターナットで調整します。
・目安:車種にもよりますが、ペダル側で10mm〜20mm程度の遊びを持たせることが一般的です。遊びが少なすぎるとブレーキが引きずり、多すぎると制動が遅れる原因になります。
交換後の必須作業:慣らし運転(アタリ付け)の方法
新品のブレーキシューは、ドラムと完全に密着していません。性能を完全に引き出し、安全性を確保するために必ず慣らし運転(アタリ付け)が必要です。
・慣らし方:100km程度の走行を目安に、最初のうちはやさしく、数回に分けてブレーキをかけ、シューとドラムを馴染ませてください。この間は急ブレーキを避け、熱を持ちすぎないように注意しましょう。
最後に
ブレーキシューの交換は一見難しそうに思えますが、手順を守れば誰にでもできる作業です。
簡単な作業とメンテナンスをこなしていくことで、トラブルが起きても自分で対応できるようになりますし、なにより「やれば出来るんだ」という自信につながるので是非挑戦してみてください。



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