バイクのフロントフォークは、安全性や走行性能に直結する重要な部品です。
長期間使用していればオイル漏れや劣化が進むことがあります。
オーバーホールを行うことで、これらの問題を解消し、快適なライディングが楽しめます。
自分でオーバーホールを行うことで、メカニカルな知識が深まり、トラブルシューティング能力も向上するでしょう。
今回は、私の愛車であるドラッグスター250のブレーキキャリパー側フロントフォークからオイル漏れが発生したため、初めてのオーバーホールに挑戦しました。
フロントフォークオーバーホールを始める前に!必要な準備と工具
作業前の準備:安全確保と周辺部品の取り外し
まずは車体をジャッキアップします。

フォークを車体から抜いた後では、キャップボルトの取り外しが困難になることが予想されたため、先に緩めておこうとしました。しかし、ハンドルが邪魔で作業ができなかったため、ハンドルも取り外すことになりました。
フォークを外すために移設したマスターシリンダーやフェンダー、ブレーキキャリパー、タイヤを取り外します。
純正の場合も同様にフロントフェンダー、ブレーキキャリパー、タイヤを外してください。
オーバーホールに必須の特殊工具と消耗品リスト

今回購入した工具と消耗品はこちらです。
左から
- フォークシールインストーラー
- 超ロングエクステンションバー
- フロントフォークダンパーロックソケット
- 油面調整ツール
- メスシリンダー
- サスペンションオイルG-15
- ヘキサゴンレンチ 8mm
- その他、オイルパック2リットルも用意しました。
こちらが、オイル漏れを起こしていた側のフォークです。

フロントフォークの分解と古い部品の取り外し
トップキャップボルトの取り外しと注意点
キャップボルトを外す前に、これからの作業で邪魔になるフォークガードを外します。
しかし、想像以上に固く、手作業での取り外しは不可能でした。

隙間にマイナスドライバーを突っ込んでこじって取り外しましたが、結果、フォークガードは再利用できないほど破損し、フォーク本体にも傷がついてしまいました。
フォークブーツに替えたいとは思っていたので、今回はガードは無しのままで、傷もとりあえず気にしないことにしました。
フォークガードの再利用を希望する方や、フォークへの傷つきを避けたい方は、専門業者に依頼することを強くおすすめします。
そこに工賃を払う価値はあると思いました。
ダストシール、クリップの取り外し
ガードが取れたのでダストシールを取り外します。

これはマイナスドライバーで少し持ち上げるだけで簡単に取り外すことができました。
それにしても、ひび割れがひどい状態でした…。
こちらは、オイル漏れの問題がなかった側のフォークです。

ダストシールには同様にひび割れが見られましたが、内部への水の侵入はほとんどありませんでした。
一方、こちらが、オイル漏れを起こしていた側のフォークです。

ダストシールを取り外すと、水とオイル、そしてクリップから発生したサビが混じり合い、非常に劣悪な状態でした。ダストシールだけでも早期に交換しておくべきだったと反省しました。
クリップは内部の溝にはまっていますが、外側に突出した部分をマイナスドライバーで軽くこじることで取り外せます。
クリップはC字型に切り欠かれた部分があるため、その近くからこじると外しやすかったです。
ここまできたら、フォーク上部のキャップボルトを取り外し、内部のオイルをオイルパックに排出します。
キャップボルトを緩めて外す際は、内部のスペーサーがスプリングの力で飛び出さないよう、十分注意してください。
オイルを排出するためフォークを逆さにすると、内部からワッシャーとスプリングが出てきます。
内部のオイルを排出したら、次はダンパーロッドを取り外しますが、今回の作業で最も困難な工程でした。
ラチェットハンドルに超ロングエクステンションバーとフロントフォークダンパーロックソケットを接続し、フォークの内部に差し込みます。
これによりダンパーロッドの筒部分にロックソケットが噛み込み、共回りを防ぐことで、フォーク最下部奥にあるダンパーロッドボルトを8mmのヘキサゴンレンチで緩めることが可能になります。
しかし、実際にはなかなか噛み合わず、苦労しました。
コツを掴むのにかなりの時間を要したため、ダンパーロッド自体もかなり磨耗してしまったように感じます…。
私は、フォークを上下逆さまにし、上から体重をかけて押さえつけることで、ようやく緩めることに成功しました。

次回作業する際は、ロックソケットではなく、22mmまたは21mmのナットを加工したSST(特殊工具)を自作してから挑戦したいと思います。
インナーチューブとアウターチューブの分離
ダンパーロッドが取り外せたら、インナーチューブとアウターチューブを両手で持ち、勢いよくインナーチューブを引き抜きます。完全に伸びきったところで抵抗を感じた場合、再びチューブを縮めては引き抜く動作を数回繰り返すことで、スムーズに分離できます。
この時、外側からオイルシール、ワッシャー、そしてアウターチューブブッシュが組み込まれています。

今回交換した純正部品は以下の通りです。
- キャップボルトのOリング
- ダストシール
- オイルシール
- アウターチューブブッシュ
- ダンパーロッドボルトの銅ワッシャー
新しいの組み込みとオイル充填
部品の洗浄と新しいパーツの組み付け
インナーチューブやアウターチューブ、および交換しない部品を洗浄したら、まずはインナーチューブにダンパーロッドを挿入し、その後アウターチューブの中に組み込みます。
取り外した時と同様の要領で、ロックソケットで共回りを防ぎながらダンパーロッドボルトで締め付けます。
次にアウターチューブブッシュ、ワッシャー、オイルシールをインナーチューブにセットします。

(スプリングの組み込みは後工程ですが、片側の巻き間隔が広く、もう片側が狭くなっています。)
オイルシールの打ち込みとクリップ・ダストシールの取り付け
続いて、オイルシールをフォークシールインストーラーで慎重に打ち込みます。

フォークシールインストーラーは多種多様なため、どれを選ぶか非常に迷いました。
最終的に、私が選んだのは持ち手とゴム部分が一体にできて、打ち込みミスを最小限に抑えられそうだった点と、対応するインナーチューブ径の範囲が26〜39までと他の商品より狭かった点が決め手になりました。

このように、クリップがはまる溝のすぐ下まで打ち込んだら、クリップを溝にはめ込み、ダストシールで蓋をします。
片方のクリップが溝にスムーズに収まらなかったため、オイルシールやアウターチューブ内部を傷付けないように注意しながら、ドライバーで慎重に押し込みました。
サスペンションオイルの注入とエア抜き
サービスマニュアルによると、ドラッグスター250後期のサスペンションオイル量は310㎤でG-10の指定ですが、今回はあえてG-15を使用してみました。

排出された古いオイルは焦茶色で、底の方はかなり黒ずんだ沈殿物が見られましたが、、新品はカキ氷のイチゴシロップのような鮮やかな色でした。
この新品のオイルをゆっくりとインナーチューブ内に全量注入したら、インナーチューブを上下させてエアー抜きを行います。
エアー抜きは、インナーチューブを1番上まで引き上げてから、手で上部を塞ぎ、ゆっくりと押し下げることで、オイルが圧力で細部まで浸透し、効率的に作業を終えることができます。この際、フォークの下には布などを敷き、傷つきを防止しましょう。
液面調整と最終組み立て
エア抜きが完了したら、次に液面調整を行います。

インナーチューブを完全に縮めた状態で、上端から液面までの距離を112mmに合わせるため、液面調整ツールのストッパーを112mmの位置に固定し、余剰分のオイルを吸い取ります。
フォークシールインストーラー液面調整ツールも、この作業以外で頻繁に使うことはありませんが、専用工具であるだけあって、非常に作業がしやすかったです。
液面調整が完了したら、インナーチューブにスプリング、ワッシャー、スペーサーを挿入し、キャップボルトを締め付けます。
スプリングは、巻き間隔の狭い方が下になるように組み込みます。
あとはフォークを車体に戻しますが、インナーチューブの上面がアッパーブラケットの上面と面一になるようにして固定します。
最後にタイヤなどを元に戻せば、全ての作業が完了です。
まとめ:オーバーホールを終えて感じたこと、今後のバイクライフに活かす
フロントフォークのオーバーホールは、バイクの寿命を延ばし、安全性を確保するために不可欠なメンテナンス作業です。
定期的なメンテナンスを行うことで、走行中の予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。
ご自身でメンテナンスできる知識と技術を習得することで、愛車への理解がさらに深まり、より一層バイクライフを楽しめるようになるでしょう。
次回のライディングをより快適で安全なものにするために、ぜひこのフロントフォークオーバーホールに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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